卒論の書き方 (いつまでたっても工事中)

推薦書籍
  1. 中田亨, "理系のための「即効!」卒業論文術"
    講談社ブルーバックス, ISBN: 978-4-06-257666-6, 2010年
  2. 酒井聡樹, "これから論文を書く若者のために 大改訂増補版"
    共立出版, ISBN: 978-4-320-00571-6, 2006年
  3. 藤沢晃治, "「分かりやすい文書」の技術"
    講談社ブルーバックス, ISBN: 978-4-06-257443-3, 2004年
  4. 藤沢晃治, "「分かりやすい説明」の技術"
    講談社ブルーバックス, ISBN: 978-4-06-257387-0, 2002年
  5. 杉原厚吉, "どう書くか ~理科系のための論文作法"
    共立出版, ISBN: 978-4-320-00563-1, 2001年
  6. 藤沢晃治, "「分かりやすい表現」の技術"
    講談社ブルーバックス, ISBN: 978-4-06-257245-3, 1999年
文章
  1. 参考文献の文章を写さない.参考文献を過不足なく引用することは重要であるが,文章をそのまま写すことは御法度.必ず自分の書体で文章を構成すること.
  2. 後輩にとってわかりやすい文章,構成,数式の導出をするように留意する.卒論が学外に公開されることもあるが,卒論の読者は,主として皆さんの後輩である.このため,1年前の自分が読んだときに,よく理解できるように文章を練る.特に,式変形,定理の証明に当たっては,専門家から見れば多少くどくなるようであっても,丁寧に記述することは重要である.
  3. 文章とは1対の主語と述語から必ず構成されている.日本語の場合では,主語が省略されていることも多々あるが,述語を持たない文章は文章ではない.また,「このグラフは....と考える」のように,擬人法を使うことは御法度.
  4. 重文を極力使わない.ついつい「....であり,そして,....であり,また,....かもしれない」のような長い文章を書いてしまいがちであるが,適切に文章を「.」で区切り,短くする.
  5. 第3者にストレスなく読んでもらえる文章を書くことに気を配る.そのためには,まず,論文を通して背骨となるべき全体のストーリーを考える.
  6. 口語調の文を書かない.口語調とは,例えば,「~といえる」「~といえない」「~したら」「~するにつれ」「~なので」「~だから」「このくらい」「ちゃんと」「読み取れる」「~や~」など.
  7. 指示代名詞「あの」「この」「その」を多用しない.可能な限り,具体的に示す.
  8. 箇条書きを上手に使う.
  9. 句読点は全角「.」「,」を使用する.接続詞の後は「,」を付ける.ただし,数式中および参考文献の章では半角「.」「,」を使用する.
  10. 段落の意味を考える.原則として,1段落のみでsectionやsubsectionとしない.
  11. 各章の初めには,その章のあらましを5~10行程度で説明する.
  12. 各章の内容を有機的に関連付ける.節番号,式番号を\labelコマンド,\refコマンドで引用することで有機的な関連が生じる.例えば,「2.2節で述べたように」
  13. 以降で引用されないような一般論を第2章等に極力書かない.
  14. TeXの改行コマンド「\\」,改ページコマンド「\newpage」等は原則使用禁止.ただし,数式中で改行する必要がある場合は使用可.
  15. 英数字は半角,ギリシャ文字はTeXコマンド(\alpha等)を使用する.
数式
  1. 数式だけをだらだらと続けた文章を書かない.式変形が長くなる場合には,ポイントとなる式変形に対して,何らかの説明を文章で付け加える.
  2. 定義していない変数を使用しない.定義してから変数を使用するか,あるいは,使用した直後に定義を与える.同じ意味の変数を複数使用しない.同じ変数に複数の意味を持たせない.
  3. 数式の変形,導出過程はしつこい程度に感じるまで書く.ただし,変形の過程が長い場合,適度に文章を挿入する.また,全体として数式が40%を超えない程度まで文章を書く.
  4. 数式は文章の一部である.たまたま,式番号を付ける必要があったり,文字と同列に書くには煩雑であるため,別行立てとなっているだけである.この意味において,数式あるいは変数から始まる文章は原則禁止.また,分数を文章中に書くには「a/b」のように表現し,分子と分母を上下に並べない.
  5. 具体例を用いた説明を多用する.この場合,TeXのtheorem環境を使用して
    [例2.3]~(例終)
    とする.theorem環境を使用すれば,前後に適度なスペース行を自動的に入れてくれ,読みやすくなる.
章構成
  1. 第1章では,研究の目的,背景,意義および研究の概要,論文の構成等を記述する.特に,同様の研究が過去になされている場合,過去の文献を適切に引用するとともに,本研究のオリジナリティがどの点にあるか主張する.
  2. 最終章では,研究結果得られた結論を総括するとともに,第1章で述べた研究目的に対する達成度,今後の検討課題等を説明する.特に,第1章と最終章のみで,研究の概要,オリジナリティと結果が把握できるように留意する.
  3. 各章が有機的に結合しているような記述をする.卒論程度の文章であれば,複数の章が並列に進むようなことは考えられない.第2章より,本論が順に進んでいくことになる.このため,前の章で説明した事柄を利用する際には,章番号,式番号,ページ番号等を巧みに引用することにより,文章の重複を避けるとともに,論文自体をスリムにする.
グラフ,表,図
  1. 具体的な細かい数値を表すには表を用いるべきである.グラフでは,細かな数値を読み取ることはできないが,パラメータの値が変化したときの傾向が一目瞭然となる.このような特性を識別した上でグラフと表の使い分けをする.
  2. 研究の結論を強調できる,あるいは結果を明瞭に表現できるグラフを作成する.例えば,縦軸・横軸を対数表示したほうが良いか,あるいはリニアにしたほうが良いかは,十分に検討すべきである.
  3. 図(グラフ)を挿入したら,必ず考察を加える.考察の無い図(グラフ)は削除の対象.「... を図aに示す」だけではダメ.また,「図aにおいて,パラメータbを増加させると,cは減少する」のように,図より明らかなことも考察とは言わない(書いてもよいが).それよりも,「だからどうなんだ」が重要な考察事項.
  4. 図中には日本語を使わず,英語のみとする.
  5. フォントは,i) Times系のみ,ii) Helvetica系のみ,iii) 通常はTimes系で強調時はHelvetica系,のいずれかに統一する.
  6. 本文の日本語と比較して,フォントが大きすぎたり,小さすぎたりしないように注意する.
  7. 何を示している図であるかが,基本的には図のみで判断可能となるように作成する.
  8. TeXに読み込む場合,縦横比を別々に指定して,縦に圧縮あるいは横に圧縮された図とならないようにする.gnuplot(set sizeコマンド)あるいはtgifで作図する際に,適切な縦横比となるように設定する.
参考文献
  1. 書籍,文献を参考にすることは構わないが,丸コピーすることは厳禁.参考にした箇所には\citeコマンドにより文献の引用番号を付す.
  2. 第一歩としてインターネットを活用すればよいが,ホームページを参考文献とせず,関連する書籍を探して引用する.ホームページには嘘の情報が書かれているかもしれないし,そのホームページは明日にはアクセス不可となっているかもしれない.
  3. 参考文献をしつこい程度に引用する.極論すれば,初版では,文章1個につき1個の文献を引用するくらいでも良い.
  4. 「参考文献」は本文で引用される順に並べる.